MS法人を活用した節税事例
MS法人を活用した節税事例
相続・継承を見据えたいMS法人の活用方法
心療内科開業医のH様は、2018年にMS法人を設立されました。
●時期 2018年
●職業 心療内科開業医(新医療法人理事長、開業5年目)
●売上 約1.5億円
●年齢 53歳
●家族 奥様(医療法人理事)、長男(22歳、大学4年生、医療法人理事)
所得や資産を分散する仕組みをつくることで
トータルで支払う税金は大きく減らせます!
■H様が当初抱えていた課題
①所得税対策
②相続税対策
H様は、2年前に所得税の節税を目的として医療法人化されていたのですが、非常に経営が順調で、かつ利益率が高かったため、『医療法人化しただけでは、あまり税金が安くなったように感じない』というお悩みをお持ちでした。
また、ご長男が、医療とは全く別の道に進まれていたこともあり、どのようにスムーズに息子様に資産を継承するかという課題感もお持ちでした。
■MS法人以外の選択肢
前述の通り、H様は既に医療法人化されていたため、以下の2つの選択肢を検討されてからMS法人の設立に踏み切られました。
①役員報酬の見直し→△
H様の役員報酬は4000万円、事務長の奥様は1500万円、ご長男300万円という設定になっていましたが、それでも、医療法人に2000万円以上の利益が残り、それ大半を法人保険等に充てられている状態でした。
一般的に所得税を抑えるためには個人の所得を下げて、その分を法人保険等で積立るのが王道パターンなのですが、H様の場合は、65歳時点で第三者継承もしくはM&Aを希望されていたため、所得税を下げるために、役員報酬を更に引き下げると、法人税の増税や、退職時に退職金で取りきれないほどの資産が医療法人に残ってしまい、退職金で取りきれない可能性もあったため、役員報酬を見直すのみでは不十分でした。
②資産管理会社やプライベートカンパニーの設立→×
H様はご自宅以外の資産は、保険や現預金に偏り、できる限り医業に専念したいというご希望をお持ちだったため、こちらも選択肢から外れる結果となりました。
■MS法人とプライベートカンパニーの違い
そもそもMS法人(メディカルサービス法人)とは、医院との取引関係にあるなど、医療関連のサービスを行う営利法人のことを、某経営コンサルティング会社が、そのように呼び始めたことで広まった呼び名と言われています。
つまり、MS法人も、資産管理会社も、プライベートカンパニーも呼び名は違いますが、
株式会社や合同会社などの一般的な営利法人であるという点では同じです。
大きな違いは、医院との利害関係があるかどうかという点です。
医院と全く関連のない事業を行う会社であれば、医療法人の理事長がその会社の代表を兼ねても問題ありませんが、利害関係のあるMS法人と医療法人の代表を兼務することは利益相反となるためできません。
そのため、ご家族をMS法人の代表とされている方がほとんどです。
■MS法人の節税効果と注意点
MS法人の節税スキームが話題になったのは10年以上前のことですが、当初のMS法人は、
医療機器等を仕入れて、医院に利益を上乗せして売る、言わば利益の中抜きを行う『トンネル会社』でした。
医療法人に残るはずの利益が、そのままMS法人の利益となるため、トータルで支払う法人税は減少します。
しかし、これでは、医療法人が一方的に損をしている構造になります。そんな節税スキームを
税務署が見逃してくれるはずもなく、多くのMS法人が追徴税を課されたと聞きます。
そうならないためにも、単なる仕入れたものに利益を上乗せして売るだけではない、
MS法人の役割(存在意義)を明確する必要があります。
H様の場合は、MS法人に事務系職員の採用・育成と、医院の不動産の管理を任せ、医療法人とMS法人が相互利益の関係を築き、現在も順調に運営を続けられています。
このようにMS法人の活用においては、医療法人の利益頼みではなく、1つの独立した法人として、どのような役割を持たせるのかが鍵となるのです。
■H様への提案
H様への提案のポイントは、MS法人を設立し、医療法人内で行っていた業務をMS法人に委託することで医療法人ではなく、MS法人の中に資産が貯まっていく仕組みを構築し、息子様への資産継承をしやすくするということです。
そして、H様が65歳時点でH様、奥様の退職金原資(1.5億円)のみが医療法人に残るように調整するため、必要以上に加入していた法人保険を見直しと、将来の相続に備えて、医院名義の不動産の売却(MS法人へ)も併せてご提案しました。
■効果検証
H様は、当時就職活動中だった息子様と相談し、MS法人の運営を任せることを決められ、
MS法人の利益を活用して、法人保険に加入し、息子様の退職金を積み立てる計画も着実に進捗しています。
そして、医院の不動産の売却や、医療法人とMS法人で賃貸借契約の締結も無事済み、
MS法人3期目を迎えられた2021年現在、スタッフの採用・育成事業、不動産管理事業を中心に年間約1000万円の利益をMS法人に残せるようになっています。
結局H様、奥様の役員報酬の見直しは行わなかったものの、一連の施策を行ったことにより
何もしなかった場合と、今後15年間の所得税・法人税・贈与税額を比較すると、約2500万円節税できる見込みが立っています。
さらなる嬉しい変化として、『MS法人の運営を任せたことで、息子様が頼もしくなってきた』という奥様からの喜びの声も聞こえてきています。